2016年12月1日木曜日

呼吸困難感?!

病院カルテやWeb、書籍などでも、「呼吸困難感」という表現を目にすることがある。
呼吸困難感・・・学生時代、ベッドサイドでご指導いただいたことを思い出しながら・・・。


自覚症状」と「他覚所見
自覚症状、いわゆる臨床症状だが、痛み、かゆみ、しびれなど、その個人だけにしかわからない感覚であり、絶対的尺度では測定できない。同じ力で叩かれても、痛みの感じ方は人それぞれ違うのだから、他人と比較しても、そもそも意味をなさないものである。
一方、他覚所見は測定可能な指標であり、体温や血圧、脈拍などのいわゆるバイタルサインなどで、比較検討が可能なものである。


呼吸困難」と「呼吸不全
呼吸困難とは、息苦しさ、呼吸がしにくい感じがすることである。つまり自覚症状なので、そこに絶対的基準や指標はない。その人が”苦しい”と感じていれば”呼吸困難あり”である。
一方、呼吸不全は肺機能の低下を意味し、酸素・二酸化炭素のガス交換がうまく行われないことを意味する。動脈血液ガス検査の結果などでⅠ型、Ⅱ型と分類され(そのように定義され)、絶対的指標があり、別の人との比較検討も可能な他覚所見である。
つまり、すでにお気づきと思われるが、呼吸困難と呼吸不全は全く別のことであり、呼吸困難があっても呼吸不全があるとは限らず、呼吸不全があっても呼吸困難があるとは限らない。


話を戻すと・・・
呼吸困難と呼吸不全は、混同されて使用される場合が多く、その結果行きついた先が「呼吸困難感」という表現だろう。
呼吸困難感という表現を使う人は、恐らく”呼吸不全のような感じ”(=呼吸困難)という意図で無意識に使用しているのだと思われる。言葉は人や時代により”ゆらぐ”ものだが、これが用語の問題ではなくて概念の混同であるならば、修正が必要である。

「呼吸困難感」をみると、”頭痛が痛くなる”。